軍用地とは?メリット、デメリットを解説
軍用地とは、自衛隊や在日米軍などが使用している土地のことを言います。特に多いのは沖縄県で、全国の軍用地の約70%以上が集中しています。
✅ 軍用地のメリット・デメリットとは?
◎ メリット(利点)
- 安定収入:国から毎年「地料」が支払われるため収入が安定
- 空室リスクなし:借主が国(防衛省・米軍)で長期契約
- 売却しやすい:売買市場があり、比較的スムーズに売却可能
- 管理不要:現地に立ち入れず修繕や運営の必要がない
▲ デメリット(注意点)
- 立ち入り不可:自分で使用・活用は一切できない
- 収益性は低め:地料の利回りは低く、大きな値上がりも期待しにくい
- 税制面の優遇が限定的:相続税の「小規模宅地の特例」などが使えない
- 政治・安全保障リスク:基地の縮小や移設により将来不安もある
👉 軍用地は、リスクが少ない「安定資産」として注目される一方、税金面では事前の対策が重要です。
上記が軍用地の主なメリット、デメリットになります。
軍用地は一般の不動産とは異なる点が多く、その特徴をしっかり理解しておくことが重要です。
一般的なアパートやマンションなどの不動産は、自分で活用したり貸し出したりできる「自由度の高い資産」ですが、軍用地は国が専用で使用しているため、立ち入りや建築はできません。
また、賃貸物件では家賃を毎月受け取るのに対し、軍用地では年に一度「地料」としてまとめて収入が入るのも大きな違いです。
一方で、軍用地は空室リスクがなく、国が借り主なので安定性が非常に高いという魅力もあります。ただし、相続時の税制優遇が受けにくいなどの注意点もあるため、購入前にしっかり特徴を比較しておくことが大切です。
比較項目 | 軍用地 | 一般的な不動産(賃貸物件など) |
---|---|---|
用途 | 国(自衛隊・米軍など)が専用使用 | 自由に活用(賃貸・店舗・自宅など) |
収益の仕組み | 国からの地料(年1回) | 賃料収入(月ごと・複数契約) |
借り手の安定性 | 国が借主(超安定) | 個人・法人(空室リスクあり) |
利回り | 比較的低い(2〜4%程度) | 高利回りも可能(5%〜10%超も) |
立ち入り可否 | 所有者でも立ち入り不可 | 自由に出入り・改装可 |
管理の手間 | ほぼ不要(国が使用) | 修繕・入居対応・クレーム対応が必要 |
税制の優遇 | 制限あり(相続税の特例が使えない) | 特例多数あり(小規模宅地など) |
流動性(売買のしやすさ) | 沖縄など一部地域で売買市場あり | 全国で売買可能・需要も広い |
資産価値の上昇期待 | 限定的(再開発や建替え不可) | 利便性やリノベで価値上昇も可能 |
軍用地にかかる税金とは?【相続・固定資産税・所得税など】
固定資産税はどうなる?評価額の計算方法
✅ 軍用地の固定資産税はどうなるの?
軍用地にも固定資産税はかかりますが、通常の宅地とは評価方法が異なり、税額が安くなるケースが多いのが特徴です。
🔸 評価方法の特徴
- 軍用地は「建物が建てられず自由に使えない土地」として制限付きで評価されます。
- そのため、評価額は通常の宅地より低めになる傾向があります。
🔸 固定資産税の計算イメージ
- 土地の基準となる評価額を算出
- 軍用地として制限付き評価(減額)
- 評価額 × 税率(基本1.4%) = 税額
🔸 減免や特例措置は?
自治体によっては、軍用地に対して固定資産税の減免や軽減措置を設けている場合があります。特に沖縄県内では適用例が多いため、市町村の税務課に確認することをおすすめします。
地代収入にかかる所得税の扱い
軍用地の地代収入は、不動産所得として課税対象になります。
収入から必要経費(固定資産税・管理手数料など)を差し引いた額に対して、総合課税(他の所得と合算)で所得税がかかります。
相続税評価額はどう決まる?
軍用地の相続税評価額の計算式は【固定資産評価額×公用地の評価倍率×(1-0.4)】となっています。この式を普天間基地で例えてみます。
【普天間基地の軍用地 相続税評価額の計算例】
項目 | 金額(例) | 説明 |
---|---|---|
固定資産評価額 | 1,000万円 | 所有している土地の固定資産税評価額の例 |
公用地の評価倍率 | 1.2 | その地域の公用地に適用される倍率(市町村ごとに異なる) |
借地権割合の減額分 | 0.4 | 軍用地特有の評価減として40%減額(=1 – 0.4) |
1,000万円 × 1.2 × (1 – 0.4) = 1,000万円 × 1.2 × 0.6 = 720万円
この場合だと720万が相続税評価額になります。
公用地の評価倍率は、国税庁の路線価図・評価倍率表の公式サイトから確認できます。
▶️ 国税庁 路線価図・評価倍率表はこちら
軍用地の相続税対策|節税に失敗しないために
1. 複数の相続人で分割して所有する
複数人で分割所有すると、一人あたりの評価額が減り相続税負担を軽減できます。ただし、分割の割合や管理方法は事前にしっかり決めましょう。
2. 家族信託の活用
家族信託を使い、所有権を将来の相続人に段階的に移すことで、相続税評価額を調整しやすくなります。
3. 生前贈与で分散する
毎年110万円の非課税枠を活用して少しずつ贈与し、評価額を分散させる方法です。ただし一度に大きくは減らせません。
4. 評価減の対象となる要素を確認
例えば、使用制限や物理的制約がある場合は、税務署に相談して評価減が認められるケースがあります。
軍用地を複数人で分割した場合の影響
軍用地を複数人で分割した際のメリット、デメリットも解説していきます。
1人あたりの評価額が小さくなるため、相続税を軽減できるメリットがあります。
また、地代収入も持ち分に応じて分配できるため、公平に管理しやすい点も魅力です。
ただしその一方で、売却や管理には全員の合意が必要になるなど、手続きが煩雑になりやすいというデメリットもあります。
さらに次の世代に相続が発生すると、権利関係がどんどん複雑になる恐れもあるため、将来的な管理まで見据えた共有計画が重要です。
【メリット】
項目 | 内容 |
---|---|
💰 相続税の軽減 | 所有割合ごとに評価されるため、一人あたりの評価額が小さくなり、相続税が軽くなる可能性あり。 |
👪 複数の相続人で公平に分けられる | 地代収入も持ち分に応じて分配されるため、公平性を保ちやすい。 |
📄 登記も可能 | 登記上「〇〇分の1所有」と明確に分けることができ、法的な証明にもなる。 |
【デメリット】
項目 | 内容 |
---|---|
🏢 売却が難しくなる | 全員の同意がないと売却できないため、1人でも反対すれば話が進まない。 |
💸 地代の分配手続きが複雑 | 防衛省からの地料を分割するには、代表者の指定や各人の口座登録など手続きが必要。 |
🧾 税金申告が個別に必要 | 各人が不動産所得として確定申告する必要があり、管理や経理が面倒になる。 |
⚖️ 次の相続時にさらに細分化 | 共有者が亡くなると持ち分がさらに分割され、権利関係が複雑になっていく(共有者が10人以上に…という例も) |
法人化による節税メリットと注意点
軍用地を法人で所有する方法とは?
方法①:法人で新たに軍用地を購入する
株式会社や合同会社を設立し、その法人名義で軍用地を購入します。
法人名義で契約を締結すれば、地代収入は法人所得となります。
ポイント
法人設立には登記・資本金・事業目的の設定が必要です。
購入後は、防衛省との借地契約も法人名義に。
方法②:個人所有の軍用地を法人に移す(売却または出資)
すでに個人が所有している軍用地を、法人に売却または現物出資します。
売却の場合は「譲渡所得税」、出資の場合も税務上の評価が必要です。
注意
・法人へ売却すれば現金化できますが、譲渡益が発生する場合は課税対象に。
・出資の場合も、法人の資本金に反映されるため手続きは慎重に行う必要があります。
【法人所有でのメリット】
項目 | 内容 |
---|---|
💰 節税 | 経費計上や所得分散ができ、所得税対策に有効。 |
👨👩👧👦 資産承継がしやすい | 法人の株式を次世代に譲渡するだけで実質的な所有移転が可能。 |
📊 管理の一元化 | 複数の軍用地を法人名義にすれば、会計・税務の一元管理が可能に。 |
注意点
法人名義で所有するには、防衛省との借地契約の名義変更が必要で、審査や承諾を要することがあります。
法人に移す際の税務処理は複雑で、税理士・司法書士などの専門家によるサポートが欠かせません。
法人設立・維持にもコスト(法人税、決算、登記)がかかります。
贈与・家族信託を活用した税金対策
生前贈与された軍用地の評価額は、基本的に贈与が行われた日の時価で評価されます。
つまり、相続が発生した時点ではなく、実際に贈与が行われた時点の評価額が基準になります。ただし、相続開始前3年以内の贈与になると相続税の課税対象になりますので注意が必要です。
区分 | 評価時点 | 補足 |
---|---|---|
通常の生前贈与 | 贈与時 | 贈与税の対象。評価は贈与時点の時価で計算 |
相続開始3年以内の贈与 | 贈与時だが課税上は相続財産に加算 | 相続税の対象になるため注意 |
生前贈与の最適なタイミングと注意点
✅ 生前贈与の最適なタイミングと注意点
🔸 最適なタイミング
- 相続開始3年以上前に贈与:3年以内の贈与は相続税の対象になるため、早めの贈与が有利。
- 判断能力があるうちに:意思能力がなくなると贈与契約が無効にされる恐れがあります。
- 不動産の評価額が低い時期:評価が安い時に贈与すれば、贈与税の節税につながります。
⚠️ 注意点
- 贈与税の発生:年間110万円を超える贈与には贈与税がかかります。
- 贈与契約書の作成:口頭ではなく書面で証明しておくことが重要です。
- 登録免許税・不動産取得税:贈与でも登記変更には税金が発生(登録免許税2%、取得税3〜4%)。
- 固定資産税の負担移転:贈与後は新所有者に税負担が移ります。
- 相続時精算課税制度の慎重な選択:一度選ぶと撤回不可なので、活用には十分な検討が必要です。
💡まとめ:
生前贈与は「相続3年以上前」「評価が低い時期」「健康なうちに」が鉄則。
手続きや税負担、今後の管理も含めて、必ず税理士などの専門家に相談しながら進めましょう。
家族信託による柔軟な資産承継について
家族信託とは、自分の財産(例:軍用地や不動産)を信頼できる家族に託し、将来にわたって管理・運用・承継を柔軟にコントロールできる仕組みです。
【家族信託の仕組み】
役割 | 内容 |
---|---|
委託者 | 財産を預ける人(例:親) |
受託者 | 財産を管理・運用する人(例:子ども) |
受益者 | 財産から利益を受ける人(例:親または他の家族) |
家族信託が資産承継に強い理由
- ✅ 認知症対策になる(後見制度なしでも管理が継続可能)
- ✅ 相続ではなく「信託契約」で次世代に承継できる
- ✅ 遺言のように自由に「次の受益者」も設定可能
- ✅ 不動産収入の管理や地代の受け取りもスムーズに移行できる
注意点
- 信託契約の設計には法的な知識が必要です
- 相続税の対象財産である点は変わらないため、節税目的だけでは不十分です
- 税理士や司法書士と連携して設計することが重要です
まとめ|軍用地の税金対策は早めの準備がカギ
プロに相談すべき3つのタイミング
①生前贈与や名義変更を検討し始めたとき
なぜ相談が必要?
不動産の評価額・贈与税額・譲渡所得税などは素人では計算が難しい
登記・贈与契約書・贈与税申告など、手続きが煩雑でミスしやすい
特に軍用地は特殊な評価方法や制限があるため、専門的な判断が必要
相談することで得られること
節税しながら贈与する最適なタイミングや方法が明確になる
契約書や登記手続きも漏れなく進められる
②認知症や判断能力の低下が心配になってきたとき
なぜ相談が必要?
判断能力がなくなると、贈与・売却・契約変更などの行為が一切できなくなる
家族信託や成年後見制度などの事前対策は、元気なうちしかできない
相談することで得られること
家族信託を使った資産管理体制の整備ができる
将来のトラブル回避と家族の負担軽減につながる
確認したい5つのチェックリスト
軍用地の名義は誰になっているか?
名義人は実際に誰か(父親・母親・祖父など)
過去に共有持分が分かれていないか
実態と登記が一致しているか?
理由: 名義が曖昧なままだと、贈与や相続がスムーズに進まず、登記変更や税務処理に支障が出るため。
軍用地の評価額・収益は把握しているか?
固定資産評価額・相続税評価額は分かるか?
地代収入はいくら?(年額/月額)
公用地倍率や路線価の確認はできているか?
理由: 現在の価値や収益性を把握しておかないと、適切な税金対策や贈与・承継プランを立てられないため。
地代収入の通帳や確定申告は誰が行っているか?
地代が入っている銀行口座は誰名義か?
所得税の申告は誰がしているか?
実際の「受益者」が誰か曖昧になっていないか?
理由: 所得の帰属が曖昧だと、贈与とみなされたり、相続後にトラブルの原因になるため。
贈与や相続の希望者(承継者)は決まっているか?
だれに引き継いでもらいたいかは明確?
他の家族との合意は取れているか?
遺言書や信託契約を検討したことがあるか?
理由: 希望や方向性が曖昧だと、将来「争続(あらそうぞく)」につながるリスクが高まるため。
相続税や贈与税の試算をしたことがあるか?
現在の財産額からおおよその税額を試算したか?
生前贈与と相続、どちらが有利か比較したか?
専門家(税理士)に相談済みか?
理由: 思ったよりも税額が高くなり、支払いに困るケースも。早めの試算が安心につながります。

・最後に軍用地に対する質問と答えを載せておきます。・
地代収入には税金がかかりますか?
はい、軍用地の地代収入は「不動産所得」として所得税の課税対象です。確定申告が必要となり、必要経費を差し引いて税金を計算します。
将来的に返還されたらどうなりますか?
返還された場合、その土地は自由に使えるようになります。ただし、インフラ未整備や土地の整地費用が発生することもあるため、収益性は状況により異なります。長期的な視点での保有が前提となります。
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